クロワッサン

お客様が差し入れでパンを沢山くださった

僕は基本的にパンをいただいた場合はこのような写真を撮って終わりなのだ

そして大抵の場合、菱田さんが家に持ち帰って残りは僕も家に持ち帰る

うちのぶんは親にあげるのだ

僕はパンを食べないのだ

パンの存在意義がわからないのだ

菱田さんもよくパンを差し入れなどでパンを買っている

僕はいつも

「パンってポジションがわからんじゃん」

って心の中で思っていた

おやつにしては重いし食事にしては軽い

このフワフワしているポジションの意味がわからなかったのだ

というか僕は美容師をやるまでずっと焼きたてパンの有名な喫茶店でバイトをしていた

ここの喫茶店は当時、土日ともなると下々の者たちが焼きたてパンをもとめて並んでいたのだ

もう忙しさでイライラしていた時には

「なんでパンなんかで並ぶんだよ」

って心の中で思っていた

そして奇跡的にパンが余った時は

「ダイキちゃん、パンを持ってく？？」

なんて言われた

本当はまったくいらなかったのにもらっていた

そうしないとパン屋のアイデンティティーがなくなってしまうような気がしたからだ

そして家で親に渡していた

親は涙を流しながら喜んでいた

僕はそれを見て

「パンの意味がわからない」

って心の中で思っていた

パンなんてフランス人だけが食べればいいものなのだ

パンが好きって言っている人なんてただのフランスかぶれなのだ

こう思っていた過去の自分を今、ぶん殴りたい！！！！！！！！！

僕は昼食をとることにした

前日に痩せる薬をもらった僕のところにはＬＩＮＥがきていた

この薬は食欲を減らす薬らしい

得意の明日からという作戦を使い普通に昼食をとろうとしていた

僕の昼食のパスタと豚丼の横に袋に入ったパンが置いてあったのだ

きっと僕に菱田さんがくれたんだと思った

だから

「これって僕のって事？？」

って聞いた

そしたら

「袋がアブラっぽかったから外に出しといただけだよ。食べてもいいよ。」

って言われた

パスタと豚丼を食べた僕はパンのアイデンティティーをめちゃくちゃにする為に食べる事にしたのだ

食べた後に

「お腹がいっぱいだけど食べてやったぜ。お前なんかお腹いっぱいで意味のないポジションで食べられる運命なんだよ。」

って言ってやろうと思った

そしてそのパンを１口かじったのだ

その瞬間・・・

目の前にエッフェル塔が現れたのだ

なんだこれは・・・

このパンはクロワッサンと言うらしい

そしてそのまま意識が飛んだ

次に目覚めた時にはもうなくなっていたのだ

外はカリカリ、中はヌッチリしたこの食べ物に僕は感動してしまったのだ

「僕のクロワッサンの歴史が塗り替えられた・・・」

と心の中で思った瞬間に思い出したのだ

僕、クロワッサンなんて今まで食べた事がない・・・

塗り替えるも何も初な気がしたのだ

僕が喫茶店でもらっていたパンにもクロワッサンはあった

でもクロワッサンなんてパンの中でも絶対に食べない分類なのだ

焼きそばがはさまっているわけでもないしコーンとマヨネーズが塗ってあるわけでもない

ただ生地を焼いただけのもの

こんなの１番食べないやつなのである

僕の人生の中でまったく必要がなかったものだ

ココイチの２カラ以上の辛さほど必要のないものだった

でももうクロワッサンが恋しい

もうクロワッサンなしでは生きていけない

寝ても覚めてもクロワッサン

そんな感動している僕を見て菱田さんは言った

「もう１個あるよ。食べていいよ。」

もう少しで

「好き・・・」

って言いそうになった

生まれて初めて菱田さんを好きになりかけたのだ

菱田さんの顔がクロワッサンに見えた

皆さんはクロワッサンを食べた事ありますか？？

食べた事がない人は人生の８割を無駄にしています

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