自分で自分に呪いをかける
ふとフェイスブックを見たら10年前の投稿が出てきた
10年前の今日、お店にシャンデリアがついた日だった
というか自分でつけていたことに驚いた
僕、こういった事ができる人間だったらしい
最近はよくお客様と10年前の話をする
10年前の4月、僕は無職だったのだ
毎日、何やっていたんだろう??って思い出しても一切、思い出せない
ずっとお店の準備をしていたわけではないのでずっと暇していたんだと思う
毎朝、ジョギングをしようと考えていたけど1日目で近所の高校生の通学時間とかぶることに気付き
「朝から走ってる人がいるけど無職なの??」
って思われるのがこわくてやめた
だから昼ぐらいまで寝ていたと思う
このまま無職でもいいかもしれないと思っていた
でもシャンプー台が設置された頃から練習は開始したのだ
当時はまだまだこの感じのシャンプー台のお店が少なかった
今ではサイドシャンプーでなくこのバックシャンプーが主流になっているが当時はまだ少なかったのだ
このシャンプー台が設置してあるだけでお客様を呼び込めた
でも僕はサイドしかできなかったのだ
だからお店に設置された日から練習を始めたのだ
こんな話をしていたらお客様に
「それ以外にお店を出した事で変わった事ってあるんですか?」
って聞かれたのだ
僕はカットをしながら偉そうにカットを語った
「カットって流派みたいなのがあるんですよ。例えば菱田と僕でも切り方は全然違うんです。そして僕はお店を出して切り方を変えたんです。」
めっちゃ偉そうに話した
美容師という生きものは自分のカットを語りがちなのだ
「僕、お店を出すまでは時短を考えていたんです。ウエットカットしかしなかった。濡らして切る切り方ですね。そして乾かしたあとはハサミを入れなかったんです。いわゆるドライカットというのをしなかったんです。」
もう僕はハサミを動かす手をとめてイキっていた
ふんぞり返りすぎてブリッジをしていたのだ
「髪って乾かすとカタチが変わったりするんです。だからそこを整える為にドライカットをするんです。今は切り方を変えたので僕もドライカットしますよ。でも僕、ウエットの状態で仕上がりがわかってるんです。ウエットのみでもいけます。」
こういった瞬間に僕は気付いたのだ
完全に僕は自分に呪いをかけたのだ
もうこのお客様にはドライカットができないのだ
でも僕は10年前にはできなかった事をやった
呪いをとく事だ
10年前の30歳の僕にはできなかった呪いのとき方だ
「すいません。調子にのりました。ドライカットします。」
僕は大人になった
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KIDO DAIKI
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