あるお客様にずっと伝えたかった言葉

人は生きていく中で何人の人と出会い別れていくのであろう・・・

それは偶然のようであって必然のような気もする

人が選んだ選択肢が重なって出会いが生まれ選んだ選択肢が重なって別れも生まれると思う

出会いは偶然で別れは必然？

でもいきなりやってくる別れもある

そんな時に思うこともある

あの時、これを言っておけばよかった・・・

でも逆もある

あの時、これを言わなければよかった・・・

タイムマシンが使えない僕たちはそんな事を考えてもあとの祭りだ

君に好きと言えばよかった

君に嫌いなんて言わなければよかった

僕もこんな後悔の中で生きている

それは誰でもそうだと思う

本日はこんな僕とあるお客様とのお話

僕は３５歳

もう美容師をはじめて１５年以上が経っている計算になる

僕が美容の専門学校を卒業して１５年以上

美容師というのは本当に苦しい瞬間がある

遅くまで練習して休みの日もセミナーに行ったりして

何で美容師を目指しちゃったんだろうな？

こう思った日も僕にはある

まわりと比べられる世界

隣りの芝生がやけに青く見えることもある

こんな僕はお客様の笑顔に本当に救われる事が多い

「この前のスタイル、まわりから評判よかったよ！」

こう言ってくださるお客様の笑顔ですべてが報われる

僕はこのお客様の中でオンリーワンの美容師になれているんだ！

僕も笑顔になれる

僕は１５年生の美容師

という事はありがたい事に出会ってから１０年以上経っているお客様もいる

そんなあるお客様に僕はずっと言えないでいる事があった

もしかしたら今までタイミングがあったのかもしれない

でも僕は言えずにいた

もうこのままでいいと心のどこかでは思っていた

人生は一期一会なんて言葉はすっかり忘れていた

でもこの瞬間はあるときいきなり僕の目の前にあらわれた

もうこのチャンスを逃せば一生言えないかもしれない

そのお客様が鼻を痒そうにしていた

僕は大きくもなく小さくもない声でこう言った

「手、出せますよ。」

これだ

もう一度言おう

「手、出せますよ。」

これが僕があるお客様にずっと伝えたかった言葉

「手、出せますよ。」

これを言うタイミングを逃して１０年経っていた

サロンのクロスは手が出せるのだ

手が出せるのだ！！

手が出せるのだ！！！！

そう聞いたお客様は空に羽ばたくかのような勢いで手を広げた

そしてクロスから手を出した

「そうだったんですね！！！！」

僕は言った

「そうなんです。ずっと言えなくて・・・実はクロスを真ん中にあわすの大変だったんです！」

そう言った僕とお客様は笑顔になった

１０年、手を出してなかったお客様

１０年、手が出せれる事を言ってなかった僕

２人の間にはさわやかな風が吹きぬけた

そんなすがすがしい気分の２０１８年の冬の日の出来事・・・

これを他のお客様に話した

「どーでもいい。」

って言われた

うん。この話はどーでもいい。

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