僕とおじいちゃん

「今日、お店は休みなのか?」
母のところにこんな電話が来たのは夜の10時近かった
うちのおじいちゃんがアシュリに電話をかけても出なかったので母に電話をしてきたのだ
そんな時間にお店に人がいるわけがない
用件は予約の電話だった
次の日の朝一でやってほしいらしいのだ
90歳をこえるうちのおじいちゃん
さぁって言えばさぁなのだ
「お父さんってこんな時間まで起きてるんだ・・・」
母はびっくりしていた
うちのおじいちゃんは90歳をこえて家族から免許証を没収された
今まではどこに行くのも車だった
家に大人しくいることなんてまずない人
常にどこかに出かけていた
そんなおじいちゃんなのだが近年はいきなり気絶することがあったのだ
これは軽度の脳梗塞っぽいのだ
ぽいというのは病院というものに行かないのだ
数年前に何年かおばぁちゃんが入院した時も亡くなるまで数回しか会いに行かなかった
コロナと軽い脳梗塞で気絶した時は救急車で運ばれてそのまま入院になったのだがタバコを吸う為に拘束バンドまで切って病院から抜け出して追い出されてしまった
風邪をひいたら市販薬を1箱一気に飲む
こんな事をするような誰の言う事も聞かない破天荒な人間なのだ
でも人様に迷惑はかけれない
免許証は没収して鍵は隠して車には乗れなくしている
この免許証の没収のタイミングがおばぁちゃんが亡くなったタイミングぐらいだった
うちの祖父母の関係は昭和初期のような関係だった
「やい。いつまでトロトロしてるだ。行くぞ。」
よくおじいちゃんはおばぁちゃんに言っていた
おばぁちゃんは嫌な顔1つせずおじいちゃんについて行っていた
トロトロしていると怒鳴られて車のドアをしめる前に出発していた
周りから見るとすごく雑に扱っているように見えた
でもおばぁちゃんは心からおじいちゃんを慕っていた
こんなんなのに亡くなってからふと
「なんかつまらんなぁ・・・」
っておじいちゃんは言うようになった
寂しそうな顔で言うのだ
おばぁちゃんがいなくなったのが誰よりも寂しいのだ
免許証も没収だったので本当につまらなそうだった
ただおじいちゃんは月1でパーマかカラーをしたいのでお店に来るときは僕が送り迎えをするのだ
電話があった次の日、僕は少し手があいてなかった
自宅警備員のうちの父が送り迎えをする事になったのだ
でもうちの父とおじいちゃんの関係性は最悪
おじいちゃんが父をかなり嫌っているのだ
でも父に頼むしかないのでそうする事にした
朝、父に確認のLINEをしたのに既読がつかなかった
無視したのか寝坊したのか気付かなかったのかわからない
お願いした時に父が酔ってたせいかもしれない
こういう父なのでおじいちゃんも僕も嫌いなのだ
無理くり時間を作って僕が行くことにした
家につくとなんか庭が寂しくなっていた
ここには去年の年末までタカという柴犬がいたのだ
年末に老衰で亡くなった
最後はちょっとつらそうだった
おじいちゃんはいつも
「こいつはなかなか死なん。死に方を知らんだな。」
とぶっきらぼうに言っていた
でもおじいちゃんの事を知っている僕たち家族は「つらそうな姿がかわいそう」って言うのをこうやって嫌な言葉で表現しているのを知っている
素直じゃないのだ
タカがいなくなってから本当に元気がなくなったのだ
そして玄関をあけると
「お前が来てくれたのか!」
って嬉しそうだった
うちの父だと思っていたからだ
車に乗るとすぐに
「今日はあの女の子はいるのか?」
って聞いてきた
あの女の子とは菱田さんの事だ
「いるよ」
って答えた
そしたら
「あの子の事をふみひろがすごく気にいっている。」
って言った
ふみひろとはうちの母の弟、おじいちゃんの息子の事だ
おじいちゃんの家の2階に住んでいる
でもこれも僕は知っている
気にいっているかもしれないけどおじいちゃんにはそんな事を言ってないのだ
自分が菱田さんの事を気にいっているくせに違う人が気にいっている事にするのだ
お店についたら案の定、すぐに菱田さんに話しかけていた
僕はおじいちゃんのカラーを塗り始めた
他のお客様がいるときは僕はなるべくおじいちゃんと会話をしないようにしているのだ
うちのおじいちゃんは口を開くと誰かとか何かの悪口しか言わないからだ
お店の雰囲気が悪くなるのでなるべくいつも無言でカラーなどを塗るようにしている
今回も無言でやっていたら手があいた菱田さんが一緒に塗りに来てくれたのだ
そして
「おじいちゃん、昨日の夜は何食べたの?」
って菱田さんが聞いた
そしたら嬉しそうにおじいちゃんは答えた
「ふみひろたちが旅行に行ったからご飯がなくて自分でうどんを作った」
って言った
たぶんご飯がないなんてウソ
ご飯を用意してくれてないわけがない
好みじゃないものだったので食べていないだけだ
「今日のお昼はどうするの?」
って聞かれていた
「いつもは近所のうどん屋に行くけど今日はもううどんはいらんな。コンビニでも食べたいものないし食べんかな。」
って言った
そしたら菱田さんが
「そんなんダメ!私がお弁当を買ってくる!何がいい?」
って聞いていた
そしたら
「魚か肉って言われたら肉だな」
って答えていた
肉がいい!って言わないところが素直じゃない
「なら買ってくるね!」
ってなったのに急に
「ウナギがいい」
って言ったのだ
うちのおじいちゃんの大好物はウナギだ
菱田さんが調べて手があいた時に買いに行ってくれる事になった
なんなら僕たちにも買ってくれるそうだ
だから
「髪の毛が終わったら帰りに弁当を取りに行けばいいね!」
って言ったら
「家で1人で食べるのは寂しいからここで食べる」
って言った
なので買ってアシュリで食べる事にした
おじいちゃんとご飯を食べるなんて何年ぶりだろう
高校1年生の頃、学校になかなか馴染めなかった僕は学校帰りにあるおじいちゃんの家によく寄っていた
もっと高校生は遊んだりするものだと思っていた僕は1年生のクラスが熱血クラスだったので浮いてしまったのだ
みんな部活や勉強
僕は遊ぶ相手もなく学校帰りにあるおじいちゃんの家に寄っていた
そうするとおばぁちゃんがコーヒーを出してくれておじいちゃんが
「やい。ご飯食べてけ」
「やい。飯食いにくぞ」
なんてよく言ってくれてご飯を一緒に食べる事が多かった
2人で並んでご飯なんてそれぐらいぶりだ
そしてご飯を食べた後におじいちゃんは帰って行った
あれだけいい事を言わないおじいちゃんがこのウナギの文句は言わなかった
やれ硬いだのやれ味付けが悪いだの言うと思ったら言わなかった
そして帰りの車で
「あの女の子はよく気が利くしいい子だな」
って言っていた
そうやってふみひろが言っていたとは言わなかった
ちょっと素直になっていた
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