母と子とユニクロと

仕事が終わり家に帰ると母親が酔いに酔っていた

うちの母親は今、全てを忘れたいのだ

うちの母の母親

僕の祖母が倒れたのが１０月の終わり

病院に運ばれ検査を受けて退院した

退院した次の日が祖父の誕生日

一緒に食事に行き次の日にまた倒れた

それからずっと意識がない

もう意識は戻らない

コロナだから面会は１日に１人だけ

それも５分

「病室についたら５分だよ・・・」

真面目な母は言っていた

意識が戻らなくもう施しようのない祖母の入院期限は迫っている

そうしたら転院

転院したらお見舞いも禁止になるらしい

だからもう最期のお別れになるのだ

そんな事もあり母は酔いに酔っていた

「コロナって本当になんなんだろね・・・」

酔いに酔っている母はこれを繰り返していた

悪い事は重なるらしい

母のスマホが壊れたらしいのだ

母がスマホに変えたのが２年前

変えた理由は２つあった

①飛んでいる飛行機にむけると目的地がわかるアプリを入れたい

②ツムツムをやりたい

この２つだ

母のスマホはずっと

「容量がいっぱいです」

って出るらしい

「サポートに聞いたんだけど理由がわからないらしい・・・写真もそんなに撮ってないのに・・・」

こう言っていた

待て待て待て

毎日、ハウタを撮ってるだろ

母のスマホはシニア向けスマホだ

容量は少ないとは思う

「ツムツム以外は消したのにまだ出るの・・・」

こう言っていた

飛行機のアプリは消したのにまだダメらしい

「お父さんに言ったらツムツムを消せって言われたんだけどそうしたら私の生きがいがなくなる・・・」

こう言っていた

そもそもツムツムが生きがいなのが悲しい

でもその最後の砦まで消そうとしているのだ

ただうちの父は母より機械に弱い

最近はＬＩＮＥの詐欺サイトにはまりそうになっていたしスマホショップで電源を切ってほしいといわれて電池を引き抜いた

そんな人がわかるわけがないのだ

「ツムツムが原因ではない気はするよ」

こうアドバイスを送った

でも職場で同じぐらいの年齢の先生にも相談したらしい

「園の先生でも動かなくなった人がいてツムツムをやろうとしたら壊れたんだって」

おいおいおい

ツムツムは悪の化身かよ

「もう変えようと思うんだけどギャラクシーがいい？アンドロイドがいい？アイフォンがいい？」

こんな質問をしてくる人間にもうアドバイスはないのだ

「ショップに行って聞いたほうが早いと思う」

こうアドバイスをした

そしたら怒り出したのだ

「あんたはいつも教えてくれん。」

いやいやいや

僕だってわからない

なんなら僕はアイフォンなのだ

「いや、僕だってわからないんだよ。そういうの詳しくないの。」

こうやって言ったら

「園の若い先生に聞いたら息子さんならわかると思いますよってアドバイスくれた！若い先生はわかるのにあんたはわからんの？！」

こう言ってきやがったのだ

待て待て待て

その若い先生のそれは僕のショップで聞けと同じだ

アドバイスでもなんでもない

その先生もわからないから僕に聞けと逃げたのだ

僕がどれだけわからないか伝えたらなんとなくは納得してくれた

「どこのドコモショップがいいの？どこが車で入りやすい？」

いやいやいや

それは知らん

まぁ頑張ってもらいたい

そして次の日の朝

「今日、お父さんのものを買いにユニクロに行く」

と言っていた

ジルではなくヒートテックを買いに行くらしいのだ

だから

「あとでお金渡すから僕のヒートテックも買ってきて。黒で丸首で長袖のＬ」

ってお願いした

そしたら

「Ｌなの？！ＸＬでしょ！」

って言われた

マジうるさい

そして家を出ようとした

そしたら

「ダイキ！」

って呼び止められた

振り返ったら父だった

父が僕に声をかけるなんて１億年ぶりだ

「お前、ＸＬだろ！！！」

って言われた

マジうるさい

こんな母と子とユニクロの話

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