美容師のコトダマ “ゴミを捨てて” “早さは優しさ” 獅子柄美容師を動かした恩師の言葉たち assureスタイリスト木戸大紀

第一線で活躍する美容師の人生を変えた「恩師の言葉」を紹介する「美容師のコトダマ」。獅子柄がトレードマークのassureの木戸大紀（きどだいき）さんは、ご本人やスタッフのキャラクター、飼い犬の「はうた」の魅力が満載のブログのファンも多く、さらにassureグループ内でネタ指名No.1の実力者です。今回はそんな木戸さんに、今も心に刻まれている言葉を紹介していただきました。

「太紀さん」と呼ばれたことが、自分を打ち出すきっかけになった

くだらないって思われるかもしれないけれど、僕は「太紀さん」っていう言葉に影響を受けています。たしかきっかけは母が行った占いだったと思うのですが、そこの老婆の様な、占い師さんが僕のことを「大紀さん」だと占い的に一角足りないって言ったんです。そこで「大」を「太」にしろと。食べすぎて体が大きく、肉類が好きだからだと思います。そのあだ名はいつの間にか「太紀さん」に変わっていきました。「太紀さん」という名前のおかげで運気が上がったとは思いませんが、多くの人に認知してもらえるようになりましたが、「太」じゃなくて「犬」ではダメだったのかな？とも思います。

きっと僕のことを「太紀さん」として知っているけれど、本名は知らないっていう人もたくさんいると思います。ちなみに、もともとカルビとかハラミとか、肉類全般が好きなのですが、「太紀さん」と呼ばれるようになったせいでメニュー選択の幅が狭まってしまいました（笑）。野菜はＮＧです。でも、世間から見た僕の印象が出来上がったのはこの「太紀さん」という名前のおかげかな、と思っています。

臨機応変に動くより、怒られない場面をつくらないことが大事

assureに入った後、assureの現取締役の菱田員子に言われた一言にも影響を受けました。その当時、僕はブログ中心に働いていたのですが、ブログにUPしていた僕の私生活ブログが人気で、新規のお客さまに毎月1人から2人くらい来ていただいていたんです。

ブログを書くためにサッと昼ご飯は食べて弁当の容器をそのままにして、スタッフに負担をかけていました。飲み終わったジュースのパックも冷蔵庫にそのまま入れていたんです。それで入ってないジュースのあきパックが冷蔵庫に増えて、他のものを入れるのがどんどん難しくなっていました。飲みたいジュースも沢山あるし、練乳も届くこともあります。そんなとき僕はスタッフに「自分の食べたもの飲んだものは捨てろや」と言ってめっちゃ怒られたんですよね。これって結局、自分の食べたもの飲んだものを、菱田に捨てさせようとしてたからだと思います。

同じサロンで働く前から菱田と親交があり、一緒に食事をさせていただくこともありましたその席で僕が捨てれない自分の不満を口にすると、菱田は「私は臨機応変に何でも捨てる」と言ったんです。これはつまり、これはつまり、捨てる捨てないにムラが出てしまうような自分のキャパを超えたあきパックや、温めすぎて歪みが生まれるぐらい弁当を温めるのをやめ、「捨てやすい状態」を確立して菱田に向き合うという意味。

そのことがあってからも、僕は「自分で捨てる」というやらないことを決めました。まずは1日の予約を見て、お昼ご飯を食べる時間を確保します。お客さまの遅刻やメニュー変更・追加もある程度は考慮して、少々のイレギュラーにも対応できるような最善の流れをつくる。僕自身は臨機応変に動く場面があっても、お昼時間に臨機応変な動きを求めません。特に時間管理には厳しくなりましたし、お昼時間についてもイレギュラーが発生して、優先順位が変わっても絶対に決めた時間に食べる。僕と菱田ではお昼ご飯を食べる事の優先順位が違うので、菱田が食べれなくても仕方がないこともあります。何があっても僕は食べるつもりでやっているんです。結果として仕事のスピードも上がりましたし、僕も喜びます。ただあき容器やあきパックはそのままです。

「浜崎あゆみが第2子を生む」assureグループ菱田の言葉

以前はゴミをすてなさすぎて、1日、口を聞いてくれないこともありました。そんな忙しい日の営業中、たしか昼間だったと思うのですが、菱田員子が「浜崎あゆみが第2子を生む」と言ったんです。その言葉がすごく心に残っていて。

去年の年末に弟1子生まれて、旦那は誰かわかりません。逆算する事もできるし、第1子が生まれ、すぐに子作りしたと思うんですよね。ゆっくり丁寧にやるを否定するわけではありませんが、僕らのような男性でそれをやるのはエゴでしかないと思っていて。もちろん、人それぞれ感覚は違うと思います。

仕事が早い人は、クオリティも高いです。時間に余裕が生まれる分、質を追求できるからだと思います。それに、スピードを上げる工夫や努力が、その人の実力を押し上げるんじゃないでしょうか。

これまでいろいろな人の仕事を見てきて、仕事が遅い人はピリピリしているケースが多いなって感じています。仕事を早くするためには、異性を迎える準備が必要だし、施術の時間、放置の時間なども計算して流れをつくる必要があります。これも異性に負担をかけないための優しさだと思うんですよ。ただ早すぎは嫌われます。

ちょっと下ネタがすぎましたが、「浜崎あゆみが第2子を生む」がそれぐらい衝撃的でした。旦那が誰なのか知りたいです。

「アンタそこから飛び降りて！」豊橋の恩師の言葉

最後に豊橋美容専門学校時代の話を一つ。学生時代の僕はとてもマジメとは言えませんでした。学科中はクラス全員にメールを送っていたし、ワインディングの授業で巻けた人から帰れるってときは、超適当に巻いてさっさと帰っていました。バイク通学禁止なのにバイクで来ていることがバレて高校で停学を食らった後藤くんも友達です。出席日数も退学までギリギリで、病気にかかっても休めない状態でした。

1年で専門学校をやめて、東京に行こうと思っていたので、勉強もまともにしていませんでした。ところが東京に行ったところで、やりたいことがなかったのです。僕はただ東京が憧れだったんですよ。

とりあえず無気力なので、やりたいことを探すもののなかなか見つからず。しかも同じタイミングで仲のよかった友人が学校をやめ、ニートに。僕もニートになりたくなってしまったのです。その後、その子と遊ぶことが増えました。その子の口癖が「東京に2人で行って天下を獲ろう！」でしたが、何で天下を獲るのかわからないし、あっ。こいつ馬鹿なんだ。って思うようになりました。

東京で天下を獲るつもりだったんですが、何で天下を獲るのかかわらないし…。お金もないし、これからどうしようかと思っていたとき、「とりあえずやっぱり美容師をしよう」と思って、就職活動したんです。

「とりあえず美容師するので、どこでもいいから美容室紹介してください」という僕の言葉を聞いた専門学校の先生は「アンタなんかに紹介できる美容室あらへんわ！」と言いました。いや、実際は関西弁ではなかったです。記憶がおかしいです。僕は先生にも好かれていたこともあり、どこか紹介してくれるかもしれないと期待していたのですが、在学中の態度も紹介の頼み方もよくないわけだから、まあ当たり前ですよね（笑）。

結局、卒業したあとも職探しで専門学校に行きました。しかも、毎日のように、人体実験のバイトも紹介されました。先生の立場からすると、特に本気でもない僕が専門に毎日、遊びに来ている感じだったんだと思います。そして、最終的には隣りのビルを指差して「木戸くん、あそこから飛んで！」と言ってきやがりました。

先生には無礼なこともされましたが、会う機会があったら挨拶はしようと思います。一昨年、先生から「学校のパンフレットに出てくれないか」という連絡がありました。いや、嘘です。先生が今、何をやっているか知らないし専門学校がどうなろうが僕には一切、関係のないことですが尊敬するキングカズにいつか会えたら嬉しいです。

プロフィールassure
スタイリスト／木戸大紀　(きどだいき)

愛知県出身。豊橋の美容専門学校卒業。SNSを通じてairの中村氏と出会い、多大な影響を受け2019年に中村氏の結婚式に参列。「木戸くん、あそこから飛んで！」って言ったのは吉田先生。自ら「獅子柄美容師」と名乗り、ブログが人気を博する。assureグループの看板スタイリストの一人。

（文／木戸大紀撮影／木戸大紀）

元ネタ

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